小説の後書きとかいい訳とか。あとは雑記。
<BR>
<BR>
けれど。<BR>
この状態は、どうしようもなく僕の心を痛めつける。<BR>
黒猫の金の目がろうそくの明かりを反射する。<BR>
苦しい。<BR>
どうしようもない。<BR>
憎くてたまらなくて。<BR>
消えて欲しくてならなくて。<BR>
いっそ、死んでしまえばいいのにとすら思った相手が、足元に倒れている。<BR>
<BR>
<BR>
あれがいけなかったのだ。<BR>
母の介入のない、父とのセックス。<BR>
そこに己のいないことこそが、母の心を傷つけたのだ。<BR>
<BR>
<BR>
夜。<BR>
ハロルドでさえも寝入っただろうに違いない深夜遅く。<BR>
何もない夜に、不意に僕は目覚めた。<BR>
誰かに頬を張られたかのような突然の覚醒だった。<BR>
おそらく、その感覚は正解だったのだろう。<BR>
心臓が止まるような恐怖に、僕は目を閉じる術さえも忘れてそこを凝視していた。<BR>
間違いなく暗い闇の中に。<BR>
ろうそくの灯りひとつ、電灯の灯りひとつない室内に、ぼんやりと浮かび上がるそれ。<BR>
それ自体が光を放つのか、ぼんやりとうっすらと靄のような霧のような光をまとい浮かび上がるのは、間違いなく、母だった。<BR>
いつか見た悪夢の中で首を吊って死んでいた母そのままの姿には、記憶の底にある貴族の令夫人の美しさなどどこにも見当たらず、ただ、常ならぬものを見ているという恐怖に、怖に襲われる。<BR>
起き上がろうにも逃げようにも動かぬ全身に、おぞましい存在が短に存在するということに、冷たい脂汗がにじみ出る。<BR>
「ははうえ………」<BR>
と。<BR>
乾いた口でそう呟いたはずだった。<BR>
けれど、声は出ない。<BR>
くちびるは動かない。<BR>
惚けたように開いていた口から、空気が漏れるかのようにかすかすと音が溢れるだけだった。<BR>
全身を小刻みに震わせながら、それでいて目を瞑ることさえも忘れたような僕の目と鼻の先に、ついと、迫ってきたのは、母の顔だった。<BR>
くちびるからだらしなくぞろりと伸びた長い舌が、僕の顔に触れる。<BR>
青みを帯びて紫に変色したそれがやけに生々しく感じられて、<BR>
ヒッ−−−と、息を呑むような短い叫びが喉の奥から漏れたような気がした。<BR>
実際には、それさえもできないほどにきつい超自然の拘束に、悲鳴さえあげることはできなかったのだけれど。<BR>
乱れた髪の間から覗く白眼の割合の高い目が、僕を凝視してくる。<BR>
その目にあるのは、当然のこと慈愛や懐かしさなどではなく、ただただ恨めしいと、憎たらしいと、そういった嫉妬めいたものばかりで。それが、僕をいっそうのこと震え上がらせるのだ。<BR>
眼球を覆うことなく溢れてこぼれ落ちる涙がこめかみを滑り落ちる感触に、これが間違いなくリアルなのだと、ただの悪夢なのじゃないのだと、思い知らせてくる。<BR>
PR
この記事にコメントする
カレンダー
03 | 2024/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
28 | 29 | 30 |
フリーエリア
最新記事
(04/29)
(07/30)
(07/22)
(05/17)
(02/12)
(01/22)
(12/18)
(12/11)
(12/03)
(11/12)
(10/22)
(10/15)
(09/11)
(08/28)
(07/16)
(07/09)
(07/03)
(06/25)
(06/19)
(06/14)
(06/05)
(06/05)
(12/05)
(09/08)
(05/23)
最新トラックバック
ブログ内検索
最古記事
(11/29)
(12/01)
(12/01)
(12/01)
(12/02)
(12/02)
(12/02)
(12/12)
(12/12)
(12/12)
(12/12)
(12/15)
(12/15)
(12/15)
(12/15)
(12/15)
(12/15)
(01/31)
(01/31)
(01/31)
(01/31)
(01/31)
(02/01)
(02/01)
(02/01)
P R