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小説の後書きとかいい訳とか。あとは雑記。
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<BR>
<BR>
<BR>
 最初の印象は、「派手だなぁ」だった。<BR>
 石積みの建物ばかりが連なる色味の単調な町中で、その一団だけが色彩豊かだったからだ。<BR>
 その纏う色彩だけで、その一団がただの町人などではないと一目瞭然だった。<BR>
 彼らにしてみれば、身分を伏せてのしのび遊びであったろうが、きらきらしすぎる。<BR>
「あれが、異世界からの巫(みこ)ですか」<BR>
 こそりと耳元にささやかれて、うなづいた。<BR>
「金髪に青い目とは珍しい」<BR>
 皮膚の色は、トールさまと同じく見受けられますが。<BR>
「髪は、染めているのだろうな」<BR>
 かなりな美少年だ。<BR>
 春の花の淡い色に染められた纏う衣の色さえもあせて見える。<BR>
 その彼が五人の若者たちを従えて、なにかを叫んでいる。<BR>
 いや、喋っているだけなのだろうか。<BR>
 地声が大きいのかもしれない。<BR>
 取り巻き五人は噂通りであればいい家の出だろうに、諌めるものもいはしない。よほど巫に心酔しているのだろう。<BR>
 丹色のトーガを纏っているのは、この国の王太子のはずだ。<BR>
 群青のトーガ姿は、たしか、宰相の嫡子であったろうか。<BR>
 白衣の若者は、この国の神官長の一人息子ではなかったか。<BR>
 黄土色と緑色のトーガのふたりは、知らない。それでも、その腰に帯びた剣から見るに、神官と王族、各々の近衛に属するものなのだろう。<BR>
「しのびになっておりませんね」<BR>
 いつもであれば平坦なイザイの声に、珍しくなにがしかの感情がこもる。<BR>
「何を考えているのやら」<BR>
 忍ぶならばそれ相応の身なりというのがありましょうに。<BR>
 肩を竦めたイザイが周囲をそれとなく見渡した。<BR>
 広場には、市が立っている。<BR>
 泉水を中央に、くるりと丸い広場に開かれたいくつもの露天は、この町の住人たちにとって必要不可欠な日用品を提供している。<BR>
 自然、周辺の町の人々が集まることになるのだが。<BR>
 人々の纏う色調が暗いものばかりなのに、気づいていないのだろうか。<BR>
 埃に、日々の生活の汚れに、着衣は、色褪せている。<BR>
 彼らは、知らないのかもしれない。<BR>
 この辺りは、貧しい人々が多いのだ。<BR>
 彼らのような華美な出で立ちでうろつこうものなら、狙われる。<BR>
 彼ら自身の悪目立ちが、ひとの悪心、もしくは焦りを、煽っているということに、気づいていないのだ。<BR>
<BR>
 人心が荒れている。<BR>
<BR>
 この大陸を遍く統べる宗教の総本山、その一支部であるこの国の神殿へと繋がる参道は、ひところよりは参拝人の数もまばらとなっている。それは、今はこの国だけのことではあるらしい。<BR>
 それでも、報せを受けた時、どうしようもないやるせなさと、時間の流れの無情さを思い知らされた気がした。<BR>
 しかたがない。<BR>
 そう思った。<BR>
 世は移ろうものなのだ。<BR>
 自分だけを取り残して。<BR>
 かねてより自分は、すべてを受け入れるだけのものでしかないのだから、逆らうことさえも許されはしない。<BR>
 昔も、今も。<BR>
 自分は変わることがない。<BR>
 自分だけが。<BR>
 キリキリとこの身を穿つ痛みに、眉根を寄せた。<BR>
「大丈夫ですか」<BR>
 イザイの声に、気遣わしげな音がふくまれる。<BR>
「大丈夫だ」<BR>
 少しだけ口角をもたげてみせる。<BR>
「ご無理をなさいませんよう」<BR>
 それだけでいつもの単調な口調を取り戻すイザイに、肩が揺れた。<BR>
 頭を撫でたい衝動に駆られる。<BR>
 大きななりをして、可愛らしい。<BR>
 自分に許された、唯一の愛玩物であるイザイを、見つめる。<BR>
 その逞しい首に巻かれたくすんだ銀の環が、彼が俺のものだという証である。<BR>
 誰も、誰ひとりそれを認めることがなくとも、俺とイザイの間で交わされた約束の証なのだ。<BR>
「しないさ。俺は、なにも、しない」<BR>
 イザイを凝視する。<BR>
「一休みいたしましょう」<BR>
 あちらの泉水のほとりにでも。<BR>
 痛ましげに目を眇めたイザイから、俺は顔を背けた。<BR>
 自分が招いたイザイの表情だったが、いざ見るのは、苦痛だった。<BR>
「なにか飲み物を買ってまいりましょう」<BR>
 イザイの背中が小さくなって、俺は、詰めていた息を吐いた。<BR>
 あの日から、俺を苛む棘は日々大きく育っている。<BR>
 あの日、浅い眠りの縁にたゆたっていた俺は、突然の激痛に目覚めを余儀なくされた。<BR>
 全身が一本の血管に変貌したかのような、激しい脈動の中心は、間違いなく俺の胸だった。<BR>
 平坦で肋の浮いた貧相な胸に、黒々とした痣ができていた。<BR>
 それは、俺の心臓の真上にあった。<BR>
 それが何なのか。<BR>
 今の俺には、わかっている。<BR>
 どうして、できたのかも。<BR>
 俺の命は長くはない。<BR>
 いずれ、遠からず、この棘は育ち、俺の心臓を貫くのだろう。<BR>
 その後。<BR>
 それを思えば、すべてを諦めたはずの俺なのに、どうしようもない辛さに、目頭が熱くなるのだ。<BR>
<BR>
 大きな悲鳴に、俺の回想は破られた。<BR>
 どうやらイザイの買ってきた果汁を飲みながら意識が過去に戻っていたらしい。<BR>
 声の方向を見れば、鮮やかな一団の姿。<BR>
 巫がなにか叫んでいる。<BR>
 しかし、悲鳴の主は、彼ではないようだ。<BR>
 彼の足もとに、こどもがひとり。<BR>
 石畳に腰を落としたこどもは籠を手に持ったままだ。ただし、籠の中にはなにもない。<BR>
 濃い赤をした果実が石畳の上に散らばっている。<BR>
 その同じ赤の色彩が、巫の着衣に大きな染みを作っている。<BR>
「あのオードーとかいうらしい巫は、本当に、巫なのでしょうか」<BR>
 ことの顛末を推察することは容易かった。<BR>
 イザイの眉間に皺が刻まれている。<BR>
 不快を感じているのは確かだった。<BR>
『巫は、時が選ぶのだ。その時節、時代、ひとが望むものを』<BR>
 ならば、あれは、今とひととが望む巫の姿であるのだろう。<BR>
「品のない」<BR>
 吐き捨てるような嫌悪の声に、俺は、驚きを隠せない。<BR>
 イザイが、こんなにまで感情を露にするのを、見たことがなかったせいだ。<BR>
「傍観だけでよろしいのですか?」<BR>
 イザイの手が腰のあたりを彷徨う。<BR>
 助けたいのだろう。<BR>
 しかし、今、俺は目立ちたくはないのだ。<BR>
 ただでさえ底を尽きかけている俺の力は、今の俺の姿を保たせることだけで精一杯だった。<BR>
 これを言えば、あそこを出ることさえ許されはしなかっただろう。<BR>
 しかし、俺は、俺自身の目で確かめたかったのだ。<BR>
 一目で構わない。<BR>
 納得したかった。<BR>
 俺の命が尽きる原因を、認めることができればいいと、願っていたのだ。<BR>
「王太子がついている。神殿の近衛もいる。だいいち、あれだけの衆目がある中で、無茶振りもしないだろう」<BR>
「なにを仰られます。今にかぎらずではありますが、王族がどれだけ傲慢か。ご存知でしょうに。特に、巫が現れてからというもの、ひとをひとと思わないほどの暴君ぶりではありませんか」<BR>
 短い悲鳴が耳を打つ。<BR>
 イザイの銀の目から視線を外し、俺は、その場をもう一度見た。<BR>
「馬鹿がっ」<BR>
 王太子の近衛と、神殿の近衛とが、柄に手をかけている。<BR>
 こどもは動けないようだ。<BR>
 それどころか。<BR>
 白衣の若者が、こどもを引きずり立ち上がらせている。<BR>
「トールさま。ご命令を」<BR>
「ああ。助けてくれ」<BR>
 それ以外に、何を言えただろう。<BR>
「御意」<BR>
 イザイの口角が持ち上がる。<BR>
 背筋が逆毛立つような、そんな好戦的な表情だった。<BR>
<BR>
<BR>
<BR>
 ことばもなくその場に割って入った男の姿に、彼らは驚いたらしい。<BR>
 それはそうだろう。<BR>
 彼らの中でひときわ大柄な王太子よりも頭ひとつ分丈高いイザイが、まるで空から現れたかのように彼らには思えただろう。その独特な銀の髪を惜しげもなく陽光にさらしてこどもを庇って立つ彼の姿は、まるで伝説の銀竜そのものに見えるだろう。<BR>
 俺は、そんな彼の姿を眺めていた。<BR>
 俗な言い方をすれば「格好いい」と、拍手を送りたいほどにほれぼれする姿だ。<BR>
 イザイは、俺の、誇りでもある。<BR>
 可愛らしく、格好いい、俺の、イザイ。<BR>
 俺の許嫁だった彼が、俺に残した、たった一つの形見。<BR>
 今となっては唯一の、銀竜の生き残り。<BR>
 遠からず彼を残すことになるだろうこの身を呪わずにはいられない。<BR>
 あそこにいれば、今少し、長く生きることができるだろう。<BR>
 イザイの嘆きを少しでも先に伸ばすことができるだろう。<BR>
 それでも、俺は、見たかった。<BR>
 俺を殺す、巫を、この目で。<BR>
 その巫が、<BR>
「お前、誰だ!」と、叫んだ。<BR>
 そのことばにこみあげたのは、郷愁だった。<BR>
 懐かしい、ことば。<BR>
 おそらくは、この場で巫のことばを正しく、その国の言葉として耳に捕らえているのは俺だけだろうが。<BR>
 かつての俺が暮らしていた世界の、国の、ことば。<BR>
 忘れていたと思っていた。<BR>
 けれど、忘れてはいなかった。<BR>
 あちらで暮らした以上の時をこちらで暮らしていても、忘れなかったのだ。<BR>
 知らず、俺の目からは涙があふれだしていた。<BR>
「私の名をあなた方が知る必要はない。私はただ、私の主の命で、このこどもを助けるためにここにいる」<BR>
「助ける?」<BR>
「このこどもが何をしたか知っていて、そう言うのか」<BR>
「こいつは、俺の服を汚したんだ」<BR>
「着衣の汚れなど、洗えば済むことだ。何を喚く必要がある。近衛が剣を抜く必要がある」<BR>
「ただの着衣じゃないのですよ。巫の衣です」<BR>
「巫にぶつかっておいて、服を汚して、謝っただけで済むとでも」<BR>
 衆目のざわめきは大きくなる。<BR>
「しのび遊びではないのか。みずから正体をバラしてどうする」<BR>
 言葉に詰まる六人を一瞥し、イザイがこどもを白衣の男から奪い取る。<BR>
 こどもは礼を言い、衆目の中に見知った顔を見出したのだろう、駆け寄った。<BR>
 しかし。<BR>
「お前はクビだ」<BR>
と、うろたえたような上擦った男の声がその場の空気を砕いた。<BR>
「どこへなりと行け」<BR>
 男とこどもとのあいだで、諍いが起きるが、男は縋るこどもを振り払って、きまり悪そうにその場から逃げ出した。<BR>
 こどもは呆然とその場に佇む。<BR>
 その姿に、<BR>
「助けにはならなかったようですね」<BR>
 嘲笑を含んだ声だった。<BR>
「巫を怒らせたものを雇うものなど、この町には、いえ、この国にはいないでしょう。あなたはどうするつもりです」<BR>
 怒りというよりも、呆れるといったほうが、正しいだろう。<BR>
 ことばは悪いが、みみっちい。<BR>
 この男が宰相の後を継ぐのか。<BR>
 なんとも、曰く言いがたい感情が、俺の心を塞いでいた。<BR>
 俺は、衆目の中から、進み出た。<BR>
 しかたがない。<BR>
 開き直るしかないだろう。<BR>
 もっとも、今の俺を知るものなど、ここには誰ひとりとして、存在しないに違いない。<BR>
「イザイ。俺が引き受ける」<BR>
 こどもの傍にしゃがみ込み、俺は、イザイに言った。<BR>
 顔を真っ赤に涙をこらえているのだろう、十ほどの少年の顔を覗き込んだ。<BR>
 たったひとりの少年を救ったところで、焼け石に水どころのはなしではないだろう。それでも、無視するには、辛い。<BR>
「家族は?」<BR>
 首を横に振る。<BR>
「そうか。なら、俺のところにくるといい」<BR>
 少年ひとりくらいなら、俺にも助けることができるだろう。<BR>
「何勝手なこと言ってるんだ。そいつは俺の服を汚したんだぞ!」<BR>
 俺の肩を、巫が突然掴んだ。<BR>
 刹那、俺の全身を襲ったのは、全身を貫くような痛みだった。<BR>
 この巫は。<BR>
「トールさまっ」<BR>
 巫の動きは、イザイの思いも寄らないものだったのだろう。<BR>
 瞬時に俺の傍に移動したイザイが、俺の肩から、巫の手を払いのける。<BR>
「トールさまに触れるな!」<BR>
「巫に何をする」<BR>
 白衣の男がその場に腰を落とした巫を抱える。彼らの前に、庇うようにして騎士が立ちはだかる。<BR>
 イザイの銀のまなざしが、一同を睨み据える。<BR>
 ゾッとするほどの敵意をこめて。<BR>
「この俺にっ! 俺は、巫だっ。俺のことばは絶対なんだっ! 誰よりも偉いんだっ!」<BR>
 立ち上がり地団駄を踏む巫は、ただの我侭なこどもにしか見えない。<BR>
 こんなヤツに。<BR>
 俺は、殺されなければならないのか。<BR>
「それは、巫が神に仕えて初めて言えることだ。まだ神殿に足を踏み入れてさえいない巫が口にするな」<BR>
「なっ」<BR>
 イザイのことばにうろたえるのは、白衣の男。<BR>
「厳しい戒律を嫌って、いまだ王宮で贅沢に暮らしている巫には、存在意義などない」<BR>
 いっそキッパリ言い切るイザイに、その場の空気が凝りつく。<BR>
 青ざめた空気を破ったのは、<BR>
「俺は、いるだけでいいんだ。いるだけで世界は平和になるんだっ! だから、俺がここにいることに意味がある」<BR>
 甲高い声。<BR>
「そうです。今この時に巫が存在する。そのことが大切なのです」<BR>
 神官長の息子が、我が意を得たとばかりに、勝ち誇る。<BR>
 そうなのか。<BR>
 巫がいればそれでいいのか。<BR>
 俺などいらない。<BR>
 そういうことなのだ。<BR>
 すべてに縛られつづけてきた俺など、まったく意味がない存在だったのか。<BR>
 痛みは去らない。<BR>
 痛みはただ俺の全身を苛みつづける。<BR>
 死ねとばかりに。<BR>
 目の前が暗くなる。<BR>
 そうして、なにかが、俺の心の奥底から鎌首をもたげようとしている。<BR>
 それは、歓喜だった。<BR>
 小暗い、呪詛にまみれた、狂った歓び。<BR>
 そうか。<BR>
 俺の名を呼ぶイザイの声を遠く聞きながら、俺は、涙を流した。<BR>
 俺の死とは、こういうことなのか。<BR>
 数多の祝詞に抑え込まれつづけた、俺の怒り。<BR>
 それが、胸に穿たれた黒い棘から、滲みだしてゆく。<BR>
 俺を、憎悪一色に染め変えてゆこうとする。<BR>
「あっ」<BR>
 狂気が、俺を、捕らえる。<BR>
「あっ」<BR>
 それは、絶望だった。<BR>
「あっ」<BR>
 俺はその場でのけぞった。<BR>
 目立たないように変えていた俺の姿が、元に戻る。<BR>
 黒い髪が、あの遠い日に変わった、白へと。<BR>
 黒い瞳が、あの遠い日に変わった、赤へと。<BR>
 周囲の空気が、驚愕に染めあげられてゆくのを俺は肌で感じていた。<BR>
 目の前の少年が、巫が、その場に居合わせたものたちが、目を見開いて俺を凝視する。<BR>
「トールさまっ」<BR>
と、イザイの悲鳴が、絶望に彩られた。<BR>
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 あの遠い日の恐怖と絶望が、俺にもたらした変貌は、俺がこの世界の神である証に他ならなかった。<BR>
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 かつて、俺は、平凡な高校生だった。<BR>
 たった一つの秘密を除いて。<BR>
 俺は、男女両方の性を持っていた。<BR>
 遅い初潮を迎えたとき、ただひとりの理解者だった祖母は、<BR>
「本当に好きな人ができるまで大切にしなさい」<BR>
と、言ってくれた。<BR>
 大切。<BR>
 片頬で嗤った俺を見た祖母の悲しそうな表情を思い出すことができる。<BR>
 両親が俺に望んだのは、男であることだった。<BR>
 だから、俺は、女であろうとは一度も思わなかった。<BR>
 女である意識も、強くはなかった。<BR>
 男だと、男らしくあろうと心がけていた。<BR>
 それが百八十度変わったのは、世界が変わったからだ。<BR>
 そう。<BR>
 俺は、異世界に呼ばれたのだ。<BR>
 最後の夜、俺に絡んだ三本の触手。<BR>
 それが、俺を、この世界に引きずり込んだ。<BR>
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 銀の髪と銀の瞳。<BR>
 遠いあの日に俺を愛してくれた、銀竜の王。<BR>
 俺は、俺を女として愛してくれた彼を信じることができなかった。<BR>
 長い間。<BR>
 俺が俺の心を認めることができたとき、既に、遅すぎた。<BR>
 俺が彼らのところに来た理由が、彼らのこどもを孕むことができるからだだということが、ずっと俺の心の中で棘になっていたからだ。<BR>
 だから、彼が俺を愛してくれるのは、最悪、ただのそぶりに過ぎないのだと、そう思っていた。<BR>
 銀竜一族はあのとき衰退していた。<BR>
 総数で数百を切っていただろう。<BR>
 俺はなにかで、種が存続してゆくためには最低二百の個体が必要だと、聞いたことがあった。<BR>
 だから焦っているのだと、だから、俺なんかを愛しているふりをするのだと思っていた。<BR>
 鬱々と、俺は王の求愛を受け入れないまま日々を送っていた。<BR>
 そうして、すべてが終わる日が来たのだ。<BR>
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 俺は、俺に絡んだ触手が三本だったことを忘れていた。<BR>
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 この異世界に俺を招いたものは、銀竜の他にもあったのだ。<BR>
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 銀竜は、存続を求めて、俺を招いた。<BR>
 しかし、この世界の人間は、力を求めて、俺を招いたのだ。<BR>
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 俺は、騙され、そうして、攫われた。<BR>
 俺を求め、攫っておきながら、けれど、人間は、俺の女の性を忌んだ。<BR>
 人間の世界は、強い男権社会だったのだ。<BR>
 女性は男に従属する。<BR>
 そんな彼らにとって、“力”を与えてくれる俺が女性を持っていることが許せなかったのだ。<BR>
 俺は、人間の王とその側近たちに囲まれて、女性器を焼かれた。<BR>
 俺の処女膜を破ったのは、灼熱の鉄の棒だった。<BR>
 あの時に死んでいればよかったと、俺は何度も嘆いた。<BR>
 死の淵を彷徨いながら、
 
12:42 2013/05/06
10:05 2013/03/25 〜 18:07
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