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小説の後書きとかいい訳とか。あとは雑記。
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<BR>
※ ※ ※<BR>
<BR>
「判っている」<BR>
「知っている」<BR>
「だれがおまえをこうしたのか」<BR>
 どれほど愛そうと、少しも反応のない王子を、王は揺さぶりつづける。<BR>
 芯のない人形よりも力なく、ただ揺さぶられるままに揺れ続けるその姿は、すでに、目を背けたいものへと変貌を遂げていた。<BR>
 悪趣味な死人人形。<BR>
 救いは季節が凍てつかんばかりの冬であると言うことだったろう。<BR>
 暖かな気候であれば涌いたに違いない虫からは守られ、腐敗の進行は緩やかだった。<BR>
 それでも、確かに、死せる王子は腐敗してゆくのだ。<BR>
 傷口から血痕はぬぐい去られ、てらりとした肉と骨が露出していた。<BR>
 王の指先が傷口をなぞる。<BR>
「この太刀筋を読めぬほど愚かではない」<BR>
「ジュリオ!」<BR>
 双黒が見開かれる。<BR>
 憎悪を宿した黒いまなざしが、オイジュスを通り越して、もうひとりの王子に向けられていた。<BR>
 オイジュスを抱きしめる。<BR>
「冷たいな。おまえは。生前と変わらずに、私を見ようとすらしない」<BR>
 だから私は狂わされたのだ。<BR>
 一度でいい、おまえが心から私を父だと認め呼んでくれていたら。そうであれば、私は狂わなかったろう。おまえを息子としてだけ愛していることができたに違いない。<BR>
 息子であるおまえに、狂うことはなかったはずだ。<BR>
 我が子を抹殺することなど。<BR>
 愛している。<BR>
 愛しているのだ。<BR>
 殺すほどに。<BR>
 殺してしまえるほどにまで。<BR>
 私以外の誰にもその存在を見せたくないほどに。<BR>
 愚かな男を、嗤うがいい。<BR>
「オイジュス。我が王子よ」<BR>
 冷たい屍を撫でさすりながら、王はただつぶやきつづける。<BR>
 塔の扉は固く何重にも鍵をかけられていることなど、もはや王には何の意味もなかった。<BR>
 ただひとつだけ。<BR>
 悔やむことがあるとすれば、ただひとつだけ。<BR>
 オイジュスを殺した者に対する復讐だった。<BR>
 閉ざされた身では、果たすことはできない。<BR>
 ならばーーーーと。<BR>
 狂気と正気とを行き来する頭で、王は考えた。<BR>
 呪いを。<BR>
 もはやここから出ることは叶わないだろう。<BR>
 ならば、この血を持つジュリオの血を引く者に、逃れ得ぬ呪いを。<BR>
 そうして。<BR>
 今ひとつ。<BR>
「私は、おまえを、取り戻してみせる」<BR>
 この身は死しても。<BR>
 滅びようとも。<BR>
 どれほどの時を経ようとも、いずれ、澱んだ血の中によみがえるだろうおまえを取り戻してみせる。<BR>
 それまでは、いかように苦しもうとも、ジュリオの血縁者が滅びることはない。<BR>
 アルシードの最後のひとりにこそ、おまえの魂はよみがえるだろう。<BR>
 その時こそ!<BR>
 逃がしはしない。<BR>
「もう二度と」<BR>
<BR>
※ ※ ※<BR>
<BR>
「もう二度と」<BR>
 耳元でささやかれた声に、若者は全身で反応した。<BR>
 目の前に展開されていた白と赤に黒が混じった光景は消え去っていた。<BR>
 目を瞬かせる。<BR>
 そうして、一歩、後退した。<BR>
 凶悪なほどの歓喜に満ちた顔を見出したのだ。<BR>
「オイジュス」<BR>
 開いているはずの扉はいつの間にか閉ざされていた。<BR>
 開かない。<BR>
 何故。<BR>
 目の前の男が、生きている者ではないことは一目瞭然だった。<BR>
 その古めかしい服装も、古めかしい発音さえも。<BR>
「私の愛しい王子」<BR>
 どれほどこの時を待ったと思う。<BR>
 オイジュスの血の中におまえがよみがえるのを。<BR>
 私とお前のためのこの古寂れた伽藍の中で、おまえが戻って来ることを、気が遠くなるほど待ちつづけた。<BR>
 冷たい掌が、若者の頬を撫でた。<BR>
 全身が、凍えつく。<BR>
「思い出せ」<BR>
 おまえの血の中の記憶をよみがえらせろ。<BR>
 そうして、未来永劫、この伽藍の中で私とともにありつづけるのだ。<BR>
 若者が首を振る。<BR>
 拒絶の意味を込めて。<BR>
「この褐色の髪も瞳も、私を煽るそのくちびるさえ、私のオイジュスにそっくりだというのに」<BR>


**** あとがき
 いや〜一瞬消したかと思って焦りました。
 昨日乗りにのって書いてたのにこれだけだったのね〜というのもありますがvv 意外に長くないな。ま、元々短編向きなんだもんね〜。今更ですが。
 この後は〜ご想像の通りなんですがvv
 問題は、行為を書けないことだな。
 いや、まぁ、このブログ自体十八禁設定はしてないので、書くのはNGですけどね。してなかったはず?
 所詮書いたとしても、工藤のぬるい描写ですが。
 いいところでフェイドアウト〜自覚はあります。はい。
 それにしても、ほんっと、名前つけるの苦手だなぁ。溜め息ものです。

 少しでも楽しんでくださると嬉しいです。
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