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小説の後書きとかいい訳とか。あとは雑記。
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犬猫つれて獣医さんに行ってきました。
 猫の方は慢性腎炎の点滴。
 犬の方はフィラリアの予防注射&爪切り。フィラリアは経口タイプと注射タイプがありまして、今年から注射タイプに切り替えることに。一年一度で済むので、飼い主的に楽。犬的には〜ごめん。
 で、爪切りくらい自分でしろと言われそうですが、我が家のワンコは、保健所でもらってきたせいなのかなんなのか、爪切りにトラウマ持ちです。飼い主にでも牙剥きます。何度噛まれましたか。尤も最近は〜「いたい」と言うと、済まなさそうな顔を見せるので飼い主という理解はできてる。ただ、爪切りが怖いらしい。ひたすら。なんせ、獣医さんに切ってもらってる間、殺される〜みたいな悲鳴。所謂、ギャン泣きでしたから。しかも、御漏らし……。三歳になるんですけどね〜。
 ともあれ、興奮状態が落ち着いてから、薬を注射したのですが〜薬が強かったのか、まだ興奮が覚めやらなかったのか、待合室で履き戻すこと数回。治まらない。ビニール袋を手提げに入れておいてよかったけど……なんともはや。ここまで派手なことはさすがに初体験でした。
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少々疲れがたまり過ぎ感ありありで、なにも手につかない今日この頃。

 文章も進まないです。

 某所のブログも一時休止中。あちらは日常雑記。
 こちらは基本、書いたはなしの後書きやら言い訳やら愚痴やら用。
 で、まぁ、日記を書く習慣がついいてしまってるので寂しいのも事実。
 けど、休止って言っちゃったのでしばらくはやっぱ休止したい〜けど書きたい。これ、ある意味病気?

 ま、我が家の犬の話でもつらつらと。 
 幼気な頃の「第五」クンです。呼び方はそのまま、ダイゴ。今はふてぶてしいハンサムくんさvv
 仕事から返ってもう一度出かけようとすると必ずついて来ようと鼻声で鳴く。「泣く」が似合いそうなくらいの鳴き方。休日のお出かけのときもそう。だけど、今日は、玄関で待ち構える大誤算……ダイゴさんに「駄目」と一言命令で、すぱっと諦めた。およ? おりこうさんだったダイゴんなのでした。

 昨日は、なぜか、カラスどんと仲良し。
 すぐそこのブロック塀にパンを置いて、洗濯物を取り込んで振り返ると、もうない。
 いつもだと取り込んでる間は絶対近寄らないんだけどね。
 人馴れしてる個体だったのかな?
猫が慢性腎不全似かかったと思ったら、今度は本人が風邪から肺炎。
 軽い肺炎だったので3日寝ただけですけどね。
 なんかもう、ぼろぼろの今年。
 歳ですかね。

 歳といえば、王さま、なんかでろんでろんの甘々なんですが。これに気づかないレキサンドラもどうかしてる。まぁ、一方通行の執着と逃亡が好きなので、しかたないか。
 少しでも楽しんでもらえるといいなぁ。
仕事前に掃除してたら、機械に手を挟んでしまいました。
 手とはいえ、手の甲の「肉」でしたので、内出血と打撲で済んだのですが、微妙に小指の付け根の内側と肘の痛みが不安。
 こうしてタイプできるのでまぁいいんですが。
 仕事場の上司が「労災では診てもらうな」と言ってきたので、嘘に四苦八苦。絶対医者にはバレてます。
 どんなはさみかたしたら右手を車のドアで挟めるんや。
 こういう嘘は苦手です。
 ストーリーではいくらでも嘘つけますけどね。まぁ、嘘といっても全部一緒じゃないんだなと。しみじみ実感した昨日でした。
 腹立ちもあり、医者に二三日要安静と言われたのもあって、休みを二日ぶんどってこれ書いてますけどね。
 なんか、好かん上司ですが、やっぱ駄目だ。
雑記でいいか。

 昨日、少々BBSのほうで悩みを吐き出したので、今日は更新情報をアップ。
 ちょこっとすっきりしたかな。

 

 睡眠障害とかあってね、今、参ってる時期だったりするので落ち込むととんでもなく落ち込みます。

 今日は休みなので少々浮上中。
 あ、病院は通ってますので、大丈夫。
 おそらく。
 薮じゃあないといいんだけどね。

 基本、男性が苦手なんで〜というのを一月前の診察日に吐き出してしまった工藤。センセ、男なんですけどね。で、二週間に1回の診察を一ヶ月後に伸ばしてくれました。ううむ。意味あるのか。ないのか。機嫌悪くしたんだとしたら申し訳ないんだけどね〜。

 人類の半分は男性なんだからもう少しリラックスできりゃあいいんだけどね。リラックスしてるようで実はセンザンコウ並みにかちかちになってるのが工藤という生き物です。

 その割にBL書いてますが。
 だから、JUNEなんですよね。多分。
 苦手というより、正直言うと、嫌い、怖い、ってなっちゃってるので、創作で虐めてるのかもしれん。
 だから、工藤の書く話の主人公はあまりハッピーエンドを迎えない。たまに迎えても、どこか釈然としないところが残る。
 これ、きっと、工藤の男性苦手意識の為せる技。

 まぁ、こればかりはどんな薬もでないでしょうからねぇ。
 しゃあないか。
ちっくりちっくり進めてる「異端の鳥」ですが。
 やっぱ、工藤の書く話は残酷なのかなぁ。
 このごろ悩んでます。

 残酷を目指してるつもりはないのですが。
 甘い話が書けないだけなんですけどね。
 でも〜ううむ。
 個人的には、「艶体詩」が自分の中では限界点なんですけどね。
 何を残酷ととるかってことなのかなぁ。

 本人の了承も得ずに肉体改造するのが一番残酷かなと思っちゃうんですけどね。

 昔は、ロボトミー手術が残酷だと思ったし。

 戦争が残酷なのはいうまでもないし。

 奴隷なんて言うのも残酷ですし。

 独裁支配というのも残酷だよなぁ。

 色々ありますが、ジュネ限定の思考で書いてますからね。
 あまり本質的に恐ろしいのはパスしたいのが正直なところだったりします。


 難しいよね。
パソコンさんの調子が少々重い今日この頃。
 ハードの整理せんと駄目なんかなぁ。
 幾つものソフトを起動させてると、作業が〜滞る。
 今回の更新は、そんなこんなで一度再起動かけたというxx
 手間!
 アプリケーションを消すかなんかしないと駄目?
 そんなに容量喰ってるの無いんだけどな。
 困ったもんです。
まぁ、愚痴ですね。

 決して誘い受けじゃありません。念のため。

 家庭版だとチラシ裏〜とかって言われそうですけど、こちらのほうが吐き出しやすい。
 リアルで理由言っちゃうと、紙をペン先やら鉛筆の先で引っ掻く音が歯にくるんだ。これ気になりだすとどうも、発泡スチロール並みに気になるんだよね。

 色々あるんですけどね。

 創作だけで言っちゃうと、やっぱ工藤の書くのは古いのかね〜と言うことに尽きる。
 自画自賛はしない質ですが。うん。こどもの頃よく突っ込まれたからね〜他愛無いことで。
 たまにはしたっていいよね〜。誰にも迷惑にはならんし。
 と、思いつつ、やりづらくてしないままですが。

 このところ右向いても左向いてもBL世界は前向き明るい同性愛ばっかで、ちょっとな〜と。
 あとは〜表現がリアルというか生々しいし。
 みなさんエッチを楽しんでらっしゃるorz

 いや、否定はしませんよ。
 もちろん。

 ただね〜。
 自画自賛で鼻についたら申し訳ないですが。
 一応工藤も、自分の文章自体にはそれなりの自信はあるんですけど。
 というか、ひとさまに読まれても落ち込まないていどの自信ってくらいですが。
 色々展開に難があるって言うのは自覚ありますがxx
 文体自体だけなら、そう悪くはないだろうという思い込みがあります。

 ちょっとね、ちょっとね、言っていいなら〜この文章で人気があるんだってひとが多い!
 
 あ、言っちゃいました。
 うん。
 本音です。
 困ったことに。

 あとは〜なんでこんなメチャクチャ悩みのない登場人物が〜とかって突っ込みたい。

 押し倒されたら、最後まで許すなや。

 どれだけ謝ったって、それまでの罵詈雑言態度を考えたら許せんやろうとか。

 なのに、許して受け入れるんね。

 もう少し嫌がってよ!
 行為にいうなら、もう少し痛がって!

 そんな簡単に感じんわ!

 はぁ。

 まぁ、BLはセックスファンタジーだそうですが。
 そうですが。
 好みの問題だろうけど。
 けど。

 やっぱりもう少し骨のある受けが読みたい。

 できればどれだけ陵辱されても、相手を許さない。
 からだから堕ちない。
 行為で快感を覚えない。

 そういうのを読みたい。

 んですよね〜。

 あ、主軸がズレたな。

 まいいや。

 所詮チラシ裏〜。

 ま、溜まってたんですよ。
 鬱憤が。
 ほかにもたくさんね。

 ここは殆ど人目に止まってないだろうと思って、少々大胆に書いてみました。
 不快に感じた方がいらしたらごめんなさい。

 誰も読んでないと思うけどね。
更新年月日 2013/08/14
原稿用紙換算枚数 25枚

 タイトル通りのはなしではありますが。
 童話には出ない豹なんていうものを出してみました。
 ジュネかな?  微妙ですけどね。
 せいぜいグレーテルが少年に変更かかってるくらいです。
 少しでも楽しんで頂けると嬉しいです。
原稿用紙換算枚数
更新年月日    2013年06月30日

 久しぶりの更新です。
 「自業自得』に関しては、ほぼ一年近い?
 久しぶりすぎてテンションが取り戻せないまま書いてしまったのが少々反省点かな。

 ネタが沸いてから、頭の中で転がしてたのとは少々違ってます。ほんとはおじさんとじゃなくて佐々木くん(おお、久しぶり)と、新歓コンパに出かけるって言うのだったのですけどね。

 ともあれ、まぁ、それとなく、状況をわかって頂けると嬉しいです。

 少しでも楽しんで頂けますように。
泣きながら笑い狂った。<BR>
 俺の狂った心に呼応して、世界は少しずつ壊れていった。<BR>
 きっと、俺が死ぬ時には、世界も滅びてしまうのだろう。<BR>
 狂った心の片隅で、冷ややかに理解していた。<BR>  
 滅びればいい。<BR>
 苦しめばいい。<BR>
 叫べ。<BR>
 泣け。<BR>
 死んでしまえ。<BR>
 この世界に俺を引きずり込んだ三本目の触手が何だったのか、俺は理解していた。<BR>
 この世界そのものだったのだと。<BR>
<BR>
 そうやって、どれくらいの時が流れたのだろう。<BR>
 俺は黒々とした雲に覆われた空を見上げていた。<BR>
 心はいまだ癒えることはない。<BR>
 怒りに身を任せるばかりで、自分の身に起きたことなど忘れていた。<BR>
 俺の本性は憤怒なのだと、そう考えることもなく沸き上がる激情のままに世界を震わせていた。<BR>
 そんなある時。<BR>
 不意に誰かに呼ばれたような気がした。<BR>
 鼓膜が震えたわけではない。<BR>
 言ってしまえば、心が震えた。<BR>
 ひとの声だと思えば、ゾッと怖気に震えた。<BR>
 忘れたはずのひとの王の仕打ちが頭をよぎったのだ。<BR>
 ひとは嫌いだ。<BR>
 うるさい! 呼ぶな! と、意識せずに、叫んでいた。<BR>
 それでも、低い声は、繰り返し俺を呼んだ。<BR>
 しつこい!<BR>
 俺の怒号に、風が吹き荒れた。<BR>
 おなじ声が悲鳴を上げる。<BR>
 まだいるのかと、投げた視線の先に、雷が落ちた。<BR>
 ひときわ大きな悲鳴が上がる。<BR>
 為損じたか。<BR>
 ひたと凝視したそこに、俺は薄汚れた男を見つけた。<BR>
 白い麻で作ったようなさっくりとした衣類を纏った男は、腰を抜かしたさまで放心している。<BR>
 ひとなど死ねばいい。<BR>
 俺は、次こそ為損じまいと、指を男に突きつけた。<BR>
 けれど、それは適わずに終わった。<BR>
 腰を抜かしていたとは思えないスピードで起き上がった男は、そのまま俺に這い寄り足に縋りついたのだ。<BR>
「トールさま」と。<BR>
 男が、知るはずのない俺の名を口にしたのだ。<BR>
「誰だ」<BR>
 俺は男を見下ろした。<BR>
 じっとりとした熱が、俺の足首を握る男の掌から伝わってくる。<BR>
 それに全身が逆毛立つ。<BR>
 蹴り放したかったが、なぜか、できなかった。<BR>
 不快を感じながら、どうしても、できなかったのだ。<BR>
「お前は、誰だ」<BR>
 ゆっくりと、俺は、尋ねた。<BR>
「サージと申します」<BR>
 俺の女性器がひとの王によって焼き潰されたあの時、彼は立ち会っていた王たちの中にいた。<BR>
 サージはあの時、未だ歳若い、十代半ばの、発言権のない王だった。<BR>
「三十年の昔、力のないこの身はあなたを救うことができる力を持たず、どれほど謝ろうと今更遅すぎるとわかっております。」<BR>
 そのことばに、あの刹那甲高い制止の声を聞いたような気がしたのを思い出した。<BR>
「それでも、幾度でも、謝罪をいたします。トールさまのお心が凪ぐまで、幾度でも」<BR>
 静かにゆっくりと俺の足から手を放し、地面に額を押し付けた。<BR>
 俺は既視感を覚えた。<BR>
 これとおなじことを何度かくり返していないだろうか。<BR>
 その時々に俺の足下で額づいていたのは、今よりも若くより若いサージではなかったか。<BR>
「三十年…………か」<BR>
 そんなにも、俺は荒れ狂っていたのか。<BR>
 そんなにも長い間。<BR>
 しかし、まだ足りない。<BR>
 総てを奪われた心の傷は、まだ、癒えない。<BR>
 何よりも大切な“あれ”を奪われた俺には、ひとを許すことはできない。<BR>
 そう。<BR>
 引き離されたもとの世界。<BR>
 愛した男。<BR>
 その一族。<BR>
 俺のもうひとつの性。<BR>
 そうしてなによりも、おそらくは愛した男に託されたろう、一族最後の命。<BR>
 これらはなにひとつ戻っては来ないのだ。<BR>
 どれひとつとして、取り戻すことは不可能なのだ。<BR>
 そう思うと、怒りに髪が逆立つ心地がした。<BR>
 風が俺の髪を乱す。<BR>
 俺を中心に渦巻く風の中に、ぱちぱちと小さな放電が起きる。<BR>
 悲鳴があがる。<BR>
「トールさま」<BR>
と。<BR>
「どうか怒りをお収めください」<BR>
と。<BR>
「どうか、これを見てください」<BR>
と、差し出されたサージの掌の上で、俺の周囲の放電の光を弾くそれ。<BR>
 その銀色の勾玉のようなもの。<BR>
 まさか。<BR>
 まさか、あの時の。<BR>
 憎いひとの王が、燻る大地に捨てた一族最後の希望。<BR>
 放電が止まり、風が止まる。<BR>
 俺は、サージの掌から、銀のそれを取り上げた。<BR>
 割れてはいない。<BR>
 皹もないようだった。<BR>
 不安は残る。<BR>
 そんなことでわかるはずがないと思いながらも、俺は、それを耳に当てずにはおられなかった。<BR>
 ああ。<BR>
 トクントクンと、心臓が脈打っている。<BR>
 生きている。<BR>
 涙があふれた。<BR>
<BR>
<BR>
<BR>
 最初の印象は、「派手だなぁ」だった。<BR>
 石積みの建物ばかりが連なる色味の単調な町中で、その一団だけが色彩豊かだったからだ。<BR>
 その纏う色彩だけで、その一団がただの町人などではないと一目瞭然だった。<BR>
 彼らにしてみれば、身分を伏せてのしのび遊びであったろうが、きらきらしすぎる。<BR>
「あれが、異世界からの巫(みこ)ですか」<BR>
 こそりと耳元にささやかれて、うなづいた。<BR>
「金髪に青い目とは珍しい」<BR>
 皮膚の色は、トールさまと同じく見受けられますが。<BR>
「髪は、染めているのだろうな」<BR>
 かなりな美少年だ。<BR>
 春の花の淡い色に染められた纏う衣の色さえもあせて見える。<BR>
 その彼が五人の若者たちを従えて、なにかを叫んでいる。<BR>
 いや、喋っているだけなのだろうか。<BR>
 地声が大きいのかもしれない。<BR>
 取り巻き五人は噂通りであればいい家の出だろうに、諌めるものもいはしない。よほど巫に心酔しているのだろう。<BR>
 丹色のトーガを纏っているのは、この国の王太子のはずだ。<BR>
 群青のトーガ姿は、たしか、宰相の嫡子であったろうか。<BR>
 白衣の若者は、この国の神官長の一人息子ではなかったか。<BR>
 黄土色と緑色のトーガのふたりは、知らない。それでも、その腰に帯びた剣から見るに、神官と王族、各々の近衛に属するものなのだろう。<BR>
「しのびになっておりませんね」<BR>
 いつもであれば平坦なイザイの声に、珍しくなにがしかの感情がこもる。<BR>
「何を考えているのやら」<BR>
 忍ぶならばそれ相応の身なりというのがありましょうに。<BR>
 肩を竦めたイザイが周囲をそれとなく見渡した。<BR>
 広場には、市が立っている。<BR>
 泉水を中央に、くるりと丸い広場に開かれたいくつもの露天は、この町の住人たちにとって必要不可欠な日用品を提供している。<BR>
 自然、周辺の町の人々が集まることになるのだが。<BR>
 人々の纏う色調が暗いものばかりなのに、気づいていないのだろうか。<BR>
 埃に、日々の生活の汚れに、着衣は、色褪せている。<BR>
 彼らは、知らないのかもしれない。<BR>
 この辺りは、貧しい人々が多いのだ。<BR>
 彼らのような華美な出で立ちでうろつこうものなら、狙われる。<BR>
 彼ら自身の悪目立ちが、ひとの悪心、もしくは焦りを、煽っているということに、気づいていないのだ。<BR>
<BR>
 人心が荒れている。<BR>
<BR>
 この大陸を遍く統べる宗教の総本山、その一支部であるこの国の神殿へと繋がる参道は、ひところよりは参拝人の数もまばらとなっている。それは、今はこの国だけのことではあるらしい。<BR>
 それでも、報せを受けた時、どうしようもないやるせなさと、時間の流れの無情さを思い知らされた気がした。<BR>
 しかたがない。<BR>
 そう思った。<BR>
 世は移ろうものなのだ。<BR>
 自分だけを取り残して。<BR>
 かねてより自分は、すべてを受け入れるだけのものでしかないのだから、逆らうことさえも許されはしない。<BR>
 昔も、今も。<BR>
 自分は変わることがない。<BR>
 自分だけが。<BR>
 キリキリとこの身を穿つ痛みに、眉根を寄せた。<BR>
「大丈夫ですか」<BR>
 イザイの声に、気遣わしげな音がふくまれる。<BR>
「大丈夫だ」<BR>
 少しだけ口角をもたげてみせる。<BR>
「ご無理をなさいませんよう」<BR>
 それだけでいつもの単調な口調を取り戻すイザイに、肩が揺れた。<BR>
 頭を撫でたい衝動に駆られる。<BR>
 大きななりをして、可愛らしい。<BR>
 自分に許された、唯一の愛玩物であるイザイを、見つめる。<BR>
 その逞しい首に巻かれたくすんだ銀の環が、彼が俺のものだという証である。<BR>
 誰も、誰ひとりそれを認めることがなくとも、俺とイザイの間で交わされた約束の証なのだ。<BR>
「しないさ。俺は、なにも、しない」<BR>
 イザイを凝視する。<BR>
「一休みいたしましょう」<BR>
 あちらの泉水のほとりにでも。<BR>
 痛ましげに目を眇めたイザイから、俺は顔を背けた。<BR>
 自分が招いたイザイの表情だったが、いざ見るのは、苦痛だった。<BR>
「なにか飲み物を買ってまいりましょう」<BR>
 イザイの背中が小さくなって、俺は、詰めていた息を吐いた。<BR>
 あの日から、俺を苛む棘は日々大きく育っている。<BR>
 あの日、浅い眠りの縁にたゆたっていた俺は、突然の激痛に目覚めを余儀なくされた。<BR>
 全身が一本の血管に変貌したかのような、激しい脈動の中心は、間違いなく俺の胸だった。<BR>
 平坦で肋の浮いた貧相な胸に、黒々とした痣ができていた。<BR>
 それは、俺の心臓の真上にあった。<BR>
 それが何なのか。<BR>
 今の俺には、わかっている。<BR>
 どうして、できたのかも。<BR>
 俺の命は長くはない。<BR>
 いずれ、遠からず、この棘は育ち、俺の心臓を貫くのだろう。<BR>
 その後。<BR>
 それを思えば、すべてを諦めたはずの俺なのに、どうしようもない辛さに、目頭が熱くなるのだ。<BR>
<BR>
 大きな悲鳴に、俺の回想は破られた。<BR>
 どうやらイザイの買ってきた果汁を飲みながら意識が過去に戻っていたらしい。<BR>
 声の方向を見れば、鮮やかな一団の姿。<BR>
 巫がなにか叫んでいる。<BR>
 しかし、悲鳴の主は、彼ではないようだ。<BR>
 彼の足もとに、こどもがひとり。<BR>
 石畳に腰を落としたこどもは籠を手に持ったままだ。ただし、籠の中にはなにもない。<BR>
 濃い赤をした果実が石畳の上に散らばっている。<BR>
 その同じ赤の色彩が、巫の着衣に大きな染みを作っている。<BR>
「あのオードーとかいうらしい巫は、本当に、巫なのでしょうか」<BR>
 ことの顛末を推察することは容易かった。<BR>
 イザイの眉間に皺が刻まれている。<BR>
 不快を感じているのは確かだった。<BR>
『巫は、時が選ぶのだ。その時節、時代、ひとが望むものを』<BR>
 ならば、あれは、今とひととが望む巫の姿であるのだろう。<BR>
「品のない」<BR>
 吐き捨てるような嫌悪の声に、俺は、驚きを隠せない。<BR>
 イザイが、こんなにまで感情を露にするのを、見たことがなかったせいだ。<BR>
「傍観だけでよろしいのですか?」<BR>
 イザイの手が腰のあたりを彷徨う。<BR>
 助けたいのだろう。<BR>
 しかし、今、俺は目立ちたくはないのだ。<BR>
 ただでさえ底を尽きかけている俺の力は、今の俺の姿を保たせることだけで精一杯だった。<BR>
 これを言えば、あそこを出ることさえ許されはしなかっただろう。<BR>
 しかし、俺は、俺自身の目で確かめたかったのだ。<BR>
 一目で構わない。<BR>
 納得したかった。<BR>
 俺の命が尽きる原因を、認めることができればいいと、願っていたのだ。<BR>
「王太子がついている。神殿の近衛もいる。だいいち、あれだけの衆目がある中で、無茶振りもしないだろう」<BR>
「なにを仰られます。今にかぎらずではありますが、王族がどれだけ傲慢か。ご存知でしょうに。特に、巫が現れてからというもの、ひとをひとと思わないほどの暴君ぶりではありませんか」<BR>
 短い悲鳴が耳を打つ。<BR>
 イザイの銀の目から視線を外し、俺は、その場をもう一度見た。<BR>
「馬鹿がっ」<BR>
 王太子の近衛と、神殿の近衛とが、柄に手をかけている。<BR>
 こどもは動けないようだ。<BR>
 それどころか。<BR>
 白衣の若者が、こどもを引きずり立ち上がらせている。<BR>
「トールさま。ご命令を」<BR>
「ああ。助けてくれ」<BR>
 それ以外に、何を言えただろう。<BR>
「御意」<BR>
 イザイの口角が持ち上がる。<BR>
 背筋が逆毛立つような、そんな好戦的な表情だった。<BR>
<BR>
<BR>
<BR>
 ことばもなくその場に割って入った男の姿に、彼らは驚いたらしい。<BR>
 それはそうだろう。<BR>
 彼らの中でひときわ大柄な王太子よりも頭ひとつ分丈高いイザイが、まるで空から現れたかのように彼らには思えただろう。その独特な銀の髪を惜しげもなく陽光にさらしてこどもを庇って立つ彼の姿は、まるで伝説の銀竜そのものに見えるだろう。<BR>
 俺は、そんな彼の姿を眺めていた。<BR>
 俗な言い方をすれば「格好いい」と、拍手を送りたいほどにほれぼれする姿だ。<BR>
 イザイは、俺の、誇りでもある。<BR>
 可愛らしく、格好いい、俺の、イザイ。<BR>
 俺の許嫁だった彼が、俺に残した、たった一つの形見。<BR>
 今となっては唯一の、銀竜の生き残り。<BR>
 遠からず彼を残すことになるだろうこの身を呪わずにはいられない。<BR>
 あそこにいれば、今少し、長く生きることができるだろう。<BR>
 イザイの嘆きを少しでも先に伸ばすことができるだろう。<BR>
 それでも、俺は、見たかった。<BR>
 俺を殺す、巫を、この目で。<BR>
 その巫が、<BR>
「お前、誰だ!」と、叫んだ。<BR>
 そのことばにこみあげたのは、郷愁だった。<BR>
 懐かしい、ことば。<BR>
 おそらくは、この場で巫のことばを正しく、その国の言葉として耳に捕らえているのは俺だけだろうが。<BR>
 かつての俺が暮らしていた世界の、国の、ことば。<BR>
 忘れていたと思っていた。<BR>
 けれど、忘れてはいなかった。<BR>
 あちらで暮らした以上の時をこちらで暮らしていても、忘れなかったのだ。<BR>
 知らず、俺の目からは涙があふれだしていた。<BR>
「私の名をあなた方が知る必要はない。私はただ、私の主の命で、このこどもを助けるためにここにいる」<BR>
「助ける?」<BR>
「このこどもが何をしたか知っていて、そう言うのか」<BR>
「こいつは、俺の服を汚したんだ」<BR>
「着衣の汚れなど、洗えば済むことだ。何を喚く必要がある。近衛が剣を抜く必要がある」<BR>
「ただの着衣じゃないのですよ。巫の衣です」<BR>
「巫にぶつかっておいて、服を汚して、謝っただけで済むとでも」<BR>
 衆目のざわめきは大きくなる。<BR>
「しのび遊びではないのか。みずから正体をバラしてどうする」<BR>
 言葉に詰まる六人を一瞥し、イザイがこどもを白衣の男から奪い取る。<BR>
 こどもは礼を言い、衆目の中に見知った顔を見出したのだろう、駆け寄った。<BR>
 しかし。<BR>
「お前はクビだ」<BR>
と、うろたえたような上擦った男の声がその場の空気を砕いた。<BR>
「どこへなりと行け」<BR>
 男とこどもとのあいだで、諍いが起きるが、男は縋るこどもを振り払って、きまり悪そうにその場から逃げ出した。<BR>
 こどもは呆然とその場に佇む。<BR>
 その姿に、<BR>
「助けにはならなかったようですね」<BR>
 嘲笑を含んだ声だった。<BR>
「巫を怒らせたものを雇うものなど、この町には、いえ、この国にはいないでしょう。あなたはどうするつもりです」<BR>
 怒りというよりも、呆れるといったほうが、正しいだろう。<BR>
 ことばは悪いが、みみっちい。<BR>
 この男が宰相の後を継ぐのか。<BR>
 なんとも、曰く言いがたい感情が、俺の心を塞いでいた。<BR>
 俺は、衆目の中から、進み出た。<BR>
 しかたがない。<BR>
 開き直るしかないだろう。<BR>
 もっとも、今の俺を知るものなど、ここには誰ひとりとして、存在しないに違いない。<BR>
「イザイ。俺が引き受ける」<BR>
 こどもの傍にしゃがみ込み、俺は、イザイに言った。<BR>
 顔を真っ赤に涙をこらえているのだろう、十ほどの少年の顔を覗き込んだ。<BR>
 たったひとりの少年を救ったところで、焼け石に水どころのはなしではないだろう。それでも、無視するには、辛い。<BR>
「家族は?」<BR>
 首を横に振る。<BR>
「そうか。なら、俺のところにくるといい」<BR>
 少年ひとりくらいなら、俺にも助けることができるだろう。<BR>
「何勝手なこと言ってるんだ。そいつは俺の服を汚したんだぞ!」<BR>
 俺の肩を、巫が突然掴んだ。<BR>
 刹那、俺の全身を襲ったのは、全身を貫くような痛みだった。<BR>
 この巫は。<BR>
「トールさまっ」<BR>
 巫の動きは、イザイの思いも寄らないものだったのだろう。<BR>
 瞬時に俺の傍に移動したイザイが、俺の肩から、巫の手を払いのける。<BR>
「トールさまに触れるな!」<BR>
「巫に何をする」<BR>
 白衣の男がその場に腰を落とした巫を抱える。彼らの前に、庇うようにして騎士が立ちはだかる。<BR>
 イザイの銀のまなざしが、一同を睨み据える。<BR>
 ゾッとするほどの敵意をこめて。<BR>
「この俺にっ! 俺は、巫だっ。俺のことばは絶対なんだっ! 誰よりも偉いんだっ!」<BR>
 立ち上がり地団駄を踏む巫は、ただの我侭なこどもにしか見えない。<BR>
 こんなヤツに。<BR>
 俺は、殺されなければならないのか。<BR>
「それは、巫が神に仕えて初めて言えることだ。まだ神殿に足を踏み入れてさえいない巫が口にするな」<BR>
「なっ」<BR>
 イザイのことばにうろたえるのは、白衣の男。<BR>
「厳しい戒律を嫌って、いまだ王宮で贅沢に暮らしている巫には、存在意義などない」<BR>
 いっそキッパリ言い切るイザイに、その場の空気が凝りつく。<BR>
 青ざめた空気を破ったのは、<BR>
「俺は、いるだけでいいんだ。いるだけで世界は平和になるんだっ! だから、俺がここにいることに意味がある」<BR>
 甲高い声。<BR>
「そうです。今この時に巫が存在する。そのことが大切なのです」<BR>
 神官長の息子が、我が意を得たとばかりに、勝ち誇る。<BR>
 そうなのか。<BR>
 巫がいればそれでいいのか。<BR>
 俺などいらない。<BR>
 そういうことなのだ。<BR>
 すべてに縛られつづけてきた俺など、まったく意味がない存在だったのか。<BR>
 痛みは去らない。<BR>
 痛みはただ俺の全身を苛みつづける。<BR>
 死ねとばかりに。<BR>
 目の前が暗くなる。<BR>
 そうして、なにかが、俺の心の奥底から鎌首をもたげようとしている。<BR>
 それは、歓喜だった。<BR>
 小暗い、呪詛にまみれた、狂った歓び。<BR>
 そうか。<BR>
 俺の名を呼ぶイザイの声を遠く聞きながら、俺は、涙を流した。<BR>
 俺の死とは、こういうことなのか。<BR>
 数多の祝詞に抑え込まれつづけた、俺の怒り。<BR>
 それが、胸に穿たれた黒い棘から、滲みだしてゆく。<BR>
 俺を、憎悪一色に染め変えてゆこうとする。<BR>
「あっ」<BR>
 狂気が、俺を、捕らえる。<BR>
「あっ」<BR>
 それは、絶望だった。<BR>
「あっ」<BR>
 俺はその場でのけぞった。<BR>
 目立たないように変えていた俺の姿が、元に戻る。<BR>
 黒い髪が、あの遠い日に変わった、白へと。<BR>
 黒い瞳が、あの遠い日に変わった、赤へと。<BR>
 周囲の空気が、驚愕に染めあげられてゆくのを俺は肌で感じていた。<BR>
 目の前の少年が、巫が、その場に居合わせたものたちが、目を見開いて俺を凝視する。<BR>
「トールさまっ」<BR>
と、イザイの悲鳴が、絶望に彩られた。<BR>
<BR>
<BR>
 あの遠い日の恐怖と絶望が、俺にもたらした変貌は、俺がこの世界の神である証に他ならなかった。<BR>
<BR>
<BR>
<BR>
 かつて、俺は、平凡な高校生だった。<BR>
 たった一つの秘密を除いて。<BR>
 俺は、男女両方の性を持っていた。<BR>
 遅い初潮を迎えたとき、ただひとりの理解者だった祖母は、<BR>
「本当に好きな人ができるまで大切にしなさい」<BR>
と、言ってくれた。<BR>
 大切。<BR>
 片頬で嗤った俺を見た祖母の悲しそうな表情を思い出すことができる。<BR>
 両親が俺に望んだのは、男であることだった。<BR>
 だから、俺は、女であろうとは一度も思わなかった。<BR>
 女である意識も、強くはなかった。<BR>
 男だと、男らしくあろうと心がけていた。<BR>
 それが百八十度変わったのは、世界が変わったからだ。<BR>
 そう。<BR>
 俺は、異世界に呼ばれたのだ。<BR>
 最後の夜、俺に絡んだ三本の触手。<BR>
 それが、俺を、この世界に引きずり込んだ。<BR>
<BR>
<BR>
<BR>
 銀の髪と銀の瞳。<BR>
 遠いあの日に俺を愛してくれた、銀竜の王。<BR>
 俺は、俺を女として愛してくれた彼を信じることができなかった。<BR>
 長い間。<BR>
 俺が俺の心を認めることができたとき、既に、遅すぎた。<BR>
 俺が彼らのところに来た理由が、彼らのこどもを孕むことができるからだだということが、ずっと俺の心の中で棘になっていたからだ。<BR>
 だから、彼が俺を愛してくれるのは、最悪、ただのそぶりに過ぎないのだと、そう思っていた。<BR>
 銀竜一族はあのとき衰退していた。<BR>
 総数で数百を切っていただろう。<BR>
 俺はなにかで、種が存続してゆくためには最低二百の個体が必要だと、聞いたことがあった。<BR>
 だから焦っているのだと、だから、俺なんかを愛しているふりをするのだと思っていた。<BR>
 鬱々と、俺は王の求愛を受け入れないまま日々を送っていた。<BR>
 そうして、すべてが終わる日が来たのだ。<BR>
<BR>
<BR>
 俺は、俺に絡んだ触手が三本だったことを忘れていた。<BR>
<BR>
<BR>
 この異世界に俺を招いたものは、銀竜の他にもあったのだ。<BR>
<BR>
<BR>
 銀竜は、存続を求めて、俺を招いた。<BR>
 しかし、この世界の人間は、力を求めて、俺を招いたのだ。<BR>
<BR>
<BR>
 俺は、騙され、そうして、攫われた。<BR>
 俺を求め、攫っておきながら、けれど、人間は、俺の女の性を忌んだ。<BR>
 人間の世界は、強い男権社会だったのだ。<BR>
 女性は男に従属する。<BR>
 そんな彼らにとって、“力”を与えてくれる俺が女性を持っていることが許せなかったのだ。<BR>
 俺は、人間の王とその側近たちに囲まれて、女性器を焼かれた。<BR>
 俺の処女膜を破ったのは、灼熱の鉄の棒だった。<BR>
 あの時に死んでいればよかったと、俺は何度も嘆いた。<BR>
 死の淵を彷徨いながら、
 
12:42 2013/05/06
10:05 2013/03/25 〜 18:07
 「ブラコンなんです」停滞中。
 いえ、まぁ、こちらにアップはしばらく後になりますが。
 うん。
 今までで一番Hシーンに力を入れようと頑張って頑張って、空回りしております。
 いつものでいいやんと思いつつ。
 なんか一度でいいから頑張りたいと思っちゃったのが運の尽き。
 しかも、メルちゃんが絆され受けなものだから、悩む悩む。
 あああ。
 自業自得とは言え、しんどいぞ。

 とりあえず、二作アップ。

 なんかね〜ただ今色々計画してて。

 ともあれ、三人称だからか、ひさしぶりだからか色々1話目とは齟齬が出てる。
 ルースが天然だな。
 ぶりっ子ってわけじゃないんですが、疎いのかね。
 大柄な青年なんですけどね〜。
 ま、ワンコはかわいいということで。
 狼はもっと可愛い。

 あとがきになってないなxx
更新年月日 2013/01/04(12/12/31)


 今更感ありありではありますが。
 ラストまで。

 二章を放置だったので。
 いきなり人称と視点が変わります。
 それと、リヒトシュタインさんの名前と国籍が。それに伴い、弟子のひとの名前も変更。こちら、改定前の名前では、どうにも落ち着きが悪かったので、変更です。
 で、天才ちびっ子ズも、気分転換をかねて名前を変えてみたり。こちらには深い意味はございません。

 めちゃくちゃ「愛」をまくしたててみた新章。どこか変と思ってもお目こぼし下さると嬉しいです。

 少しでも楽しんで頂けますように。

 ネタはないんですが、月一くらいでなにか書いておこうと決めてるので。

 今書いてる「ブラコンなんです」。
 乗ってるのに進まない。
 色気も出て来ない〜。
 結構悩んでます。
 困ったもんです。
from 12/10/24~

 とりあえず、仮題「ブラコンなんです」を掲示板で連載中。

 ちょっとね。
 サイト更新が面倒になってきちゃったっていうのがあるのかなぁ。
 タグ打つのが面倒でxx
 いかんですね〜。

 どちらにしても、仮題とはいえ、おちゃらけてますが。
 なんかタイトル思いつかなくてね。

 ええ〜元々禁忌の強い関係っていうのにキュンキュンする質だったので〜まぁ、インセスト物って好きだったんですが。
 はじめて書いたBLもインセスト物でしたしね。それを夢で見た書きはじめたくらいには好きだったと言う。妄想するのは楽しいですが、リアルで考えちゃダメですよね〜この関係。うん。だから、なんとなく最近はファンタジー寄りで考えてしまうかな。
 いい歳した男がにいさんにいさん言ってるのって、きもいけど、可愛いvv

 ともあれ、色々書いちゃったな〜って出し尽くした感があったせいで筆が止まってたので、初心に戻ろうが合い言葉というか、テーマです。

 そのうちサルベージする予定ですが、予定なので、未定かなぁ。
 謎。

 少しでも楽しんで頂けると嬉しいのですが。
 想い通りにかけなくて、どうにも焦れ焦れしている工藤です。

 書き散らかすたびにこれじゃない! となってますxx
 文体が工藤のレベルでですが、熟れない。
 内容が〜どうしてもかぶる。
 登場人物がどうしても王さまとか神様とかになってしまう。
 いや、いいとは思うんですが。好きだから。
 権力者に思い詰められる受けって好きなのでどうしてもそうなるんですけどね。で、少々過剰なほど執着されて怖くて逃げる受けというのを読みたいのに、見つけ出せない。だから書くんだけど。だからかぶるのも当然だけど。
 いやがっていやがって嫌がり倒してくれればいいのに。みんなニクヨクに溺れちゃう。
 哀しいなぁ。
 まぁ、少々Mっ気があるんでしょうけどね。って本格的なSM趣味はない! うん。色々試し読みに挑戦してダメだったから、あくまで病的な束縛が萌えツボってダケらしいんですよね〜。
 そこに甘さは攻めからの一方的な想いだけで、受けからの返しがないほうがいいのに〜。
 喘がなくて悲鳴のほうが好みです。
 たまには甘いのがよくなる時もありますが。
 基本は辛いほうか苦いほうがいいのよね〜。
 で、ただ今シチュエイションに詰まってます。
 書き尽くしてはないけど、好みのパターンは結構色々書き散らかしたからなぁ。
 だから滞ってる様子です。
 

 今日は一日まったり。
 まったりし過ぎで、お話もかけなかったていたらく。
 読書もできないしね。
 ただ〜ワンニャンたちとまったり〜しただけ。
 甘えん坊なワンニャンたちでした。
更新年月日    from 09/12/05 to 12/08/16
原稿用紙換算枚数 60枚

 完結までに三年かかったはなし。
 いや〜やっぱり結末つけるのヘタだわ。
 実感。
 駆け足になっちゃうんだよね。
 ま、とりあえず、これで、イッちゃんのお披露目は終わりです。

 甘いシーンは割愛。

 でも、ちょこっとずつイッちゃんがおじさんにほだされて依存してます。まぁ、少々トラウマ突つかれてますからな。しかたないかな。

 これ、実はカイザーと二度目のおか—さんは契約結婚。で、二度目のおか—さんは実のおか—さんの姉です。はい。設定盛り込みたかったんだけどくどくなりそうで割愛しちゃいました。ううむ。反省。

 少しでも楽しんで頂けると嬉しいな。
アップ 2012/08/06
原稿用紙換算枚数 37枚

 後書きってほどじゃないですが、某「魔女」という歌からインスパイア。
 って、まぁ、魔女ものは吸血鬼ものと同じくらい拘ってたりするので、今更かな。

 色っぽさないし、BLと言いつつ主人公男にする意味あったのかって感じだし〜。
 アリストーさんが可哀想な気がしないでもないですしね。その後、触れたほうがよかったのかなぁ。蛇足になりそうで切りましたが。

 相変わらず主人公が可哀想ですけどね〜。
 でも、めずらしく、溺愛かもしれん。包容溺愛攻め? Hシーンないけどvv
 少しでも楽しんで頂けますように。
 いくらなんでもと思いつつ、愚痴。
 メンヘラというわけでも、どきゅんと言うわけでもないと思うんですけどね。
 ま、本人の認識と他人の認識は微妙にずれてたりするので,わかりませんが。
 正直。

 ただ今絶賛落ち込み中なんで。

 夏ってこともあるのかな。
 とにかくぐだぐだです。
 マックスかな。

 おかげで何も手につかない。

 総受けは頭で転がしてますけど。
 なんか、昔書いた救いのない暗い話ふたつか三つをひとつにミックスして別話にしたいってなってる。
 うん。
 救いがないんですよね〜。
 所謂死にネタ。
 しかも、死後も救われてないかもしれんと言う。
 ストーリーより情景描写に力をいれた雰囲気重視の話だからこそできた暗さですが。
 あれを一本にしても良さそうだなぁと。
 まぁ、短編だからできないこともないんだよね。ただそうなるとはなしの枝葉を色々広げて伐採戦とダメ。
 確実に悪役が必要になるはなしだし。
 しかも、悪役は主人公に取ってだけ悪役で、他の人には正義の味方。だからって,主人公が実は悪役ってわけでもなく。
 相変わらず主人公が大不憫な不条理。
 ごめん。

 あああ。
 ストレスマクシマムなんだよね。
 ネーミングセンス、やっぱり、ないな。


<BR>
<BR>
「なにをしているのだ」<BR>
 亜麻色の髪の男が、通された室内を見て、声を出した。<BR>
 広く優雅な室内には、その独特の臭気が充満している。<BR>
 なにをーーとわざわざ問いただすまでもない。<BR>
 それでも男が問いたださずにいられなかったのは、彼の従兄弟にして同僚の金髪の男の思いも寄らない暴挙に驚愕したからにほかならない。<BR>
 どちらかといえば温厚な、悪く言えば周囲に埋没しかねないと評される従兄弟だった。<BR>
 そう。<BR>
 彼ら、アッシェンバッハ大公家を支える三大公爵のなかで一番の常識派と言われるマリリアード・クロイツェルには似つかわしくない暴挙に、コンラード・ヴァイツァーがである。<BR>
 ヴァイツァー公爵といえば、その踊る炎めいた亜麻色の髪とは正反対に、冷静を具現化したようなと評されている。<BR>
 残るひとたりバルトロメオ・アイローを軍神に喩えるなら、コンラード・ヴァイツァーは英知の神に。しかしながら、マリリアード・クロイツェルは神に喩えられることはない。世に並びない三大公爵の一翼を担うひとたりでありながら、その生得のバランス感覚のせいで総てを等しく均してしまうからだろう。<BR>
 外見の美しさもまた、他の公爵より秀でているようには見えない。<BR>
 見えないだけで、よく見れば、とても美しい男性だと判る。しかし、金髪と緑の瞳の、穏やかそうな男性だというのが先に立つのだ。<BR>
 だからこそ、コンラードは、驚いたのだ。<BR>
 もちろん、同い年の従兄弟のことである。穏やかなばかりの人物ではないと、他の誰よりも近しく知っている。<BR>
 しかし、それでも、これは、どうだろう。<BR>
 コンラードの涼しげな眉間にかすかに縦皺が刻まれた。<BR>
 涙にまみれた顔が、揺れる。<BR>
 いや、その未だ完成されていない若者の薄いからだが、揺れる。<BR>
 見開かれた褐色のまなざしはただ涙をたたえるばかりの虚ろと化し、コンラードを認めてもいない。<BR>
 最近になってようやく彼にも馴染んできた、姫宮倫という名の、彼らの庇護者である。<BR>
 姫宮倫。<BR>
 彼らの世界にとって死語と等しい古い形態の名を持つ少年は、大公とその三公爵の居城である空の城の廻廊に忽然と現われたのだ。<BR>
<BR>
<BR>
 宇宙空間に浮かぶ四つの城を繋ぐ廻廊は、もちろん、警備の兵が常駐している。<BR>
 この世界を遍く支配する、実質王族の城である。<BR>
 ただびとが容易く侵入を果たせるはずもない。<BR>
 どのように。<BR> 
 なぜ。<BR>
 見つけたのは、偶然にもマリリアードであり、コンラードのふたりだった。<BR>
 大公に報告をと動き出そうとしたコンラードを止めたのは、他ならない、マリリアードであった。<BR>
「なぜ」<BR>
「ふむ。私にもよくは判らないのだが」<BR>
 珍しく途方に暮れたような緑のまなざしに、コンラードが折れた形になったのだ。<BR>
 それでも、背景の確認は必要だった。<BR>
 持ち物はもちろん、少年の体内に危険物がないか、危険思想の持ち主ではないかなど、さまざまな検査がコンラードの城の研究室で内密に行われた。<BR>
 意識を取り戻した少年とことばが通じないということが、難関だった。<BR>
 今や、多少の訛はあれど世界には共通言語が行き渡り、どこであろうと意思の疎通に困ることはない。それは、どんな辺境な山奥や、惑星であろうと同じことだった。<BR>
 だけに、これは、一族としては由々しき問題だった。<BR>
 別の世界なのか、それとも、別の時間軸なのか。<BR>
 おそらくは、この少年は、この世界の、もしくは、この時代の人間ではありえない。<BR>
 嘘をついている可能性も考慮され、軽めの自白剤を用いてみたものの、結果は同じことだった。<BR>
 少年の口から出るのは、彼らがかつて耳にしたことのない、不思議なことばだったのだ。<BR>
 持ちものに記された文字等から推測するに、おそらく、少年は、ずいぶんと過去からやってきたことになる。<BR>
 軽い自白剤を投与され、酩酊に近い状態にある少年に、噓をつく余裕はない。<BR>
 脳波を見る限り、少年が嘘をついているようすは皆無である。<BR>
「コンラードさま、これを」<BR>
 侍従が持ってきたものを、コンラードは少年の目の前に差し出した。<BR>
「読めるか?」<BR>
 ことばは通じないなと、古い書物を開いて、指差した。<BR>
 焦点を結びきれないままで、それでも、褐色の瞳が、コンラードの指先を懸命にたどる。<BR>
 ほんの少しだけ、少年の視線が、しっかりと文字を捉えた。<BR>
「読めるようだな」<BR>
 なら、こちらはどうだ。<BR>
 手直にあった処分間近の書類をたぐり寄せ適当に文脈をさし示す。<BR>
 文字と認識はできるのだろうが、理解不能のようすがみてとれる。<BR> 
 共通言語で記されたそれを見て当惑するさまに、コンラードの頬が苦笑を刻む。<BR>
「コンラード」<BR>
 気がつけば、マリリアードが隣に立っていた。それに気づかないほど夢中だったのかと、肩を竦める。<BR>
 コンラードの肩に手が置かれた。<BR>
「この少年は、結局、過去から来たということか」<BR>
「結論には早計だがな」<BR>
 とりあえず、この文献を読めるそぶりがあるあたりで、かなりな過去から来たのだろう。<BR>
 それは、解読法も失われた、かつて全人類のホーム(故郷)であった星の一島国の言語だった。<BR>
 持ち物にあった記憶媒体も、初期に近い古い形態のものだ。<BR>
 デスクの上から、薄い円盤状のものを取り上げる。<BR>
「一応映像を呼び出すことはできるがな」<BR>
 デスクのスロットにディスクを差し込み、いつもは必要ない複雑な手順でキーボードを操作する。<BR>
 派手な音楽とアクションが、何もなかった空間に映し出される。<BR>
「映画か」<BR>
「のようだな」<BR>
「これは、考古学者か言語学者が泣いて喜ぶか」<BR>
 少年がつぶやいていたのと同じことばで喋る人間たちが、画面の中で立ち回りをしている。<BR>
「あの時代のあの地域の言語文化に関する情報は、ほぼ壊滅状態だからな」<BR>
「実利的には役に立ちそうもないが」<BR>
 肩を竦めるコンラードに、<BR>
「極めた学問とはそんなものだろうよ」<BR>
 穏やかに笑うマリリアードだったが、<BR>
「問題は、この少年の処遇だな」<BR>
 コンラードの提案に、表情が引き締まる。<BR>
 見れば、少年は意識を手放している。<BR>
 軽いとはいえ、自白剤を使われたのだ。薬物耐性がよほど弱い体質なのかもしれない。おそらく、意識を取り戻した時、ここでのやりとりなどは一切記憶から消えていることだろう。<BR>
「ことばも判らない未成年者を世に放りだすほど鬼ではないが」<BR>
「偶然時間軸から外れたのであれば、もう一度もとの時間軸に戻れるのではないか」<BR>
「不確定だろう」<BR>
「この時代に根を張るものとして接するほうがいいとは思うが」<BR>
「あくまで客人でいいのでは。それならば突然姿を消したとしても、さして問題は起こらない」<BR>
「いずれにしても大公閣下に報告を入れねばなるまいな」<BR>
「次の会議までには、いれておこう」<BR>
 下手に興味を抱かれないていどの情報をな。<BR>
 つぶやいたマリリアードのことばに、コンラードの目が見開かれた。<BR>
<BR>
<BR>
 DVDを返しに家を出た。<BR>
 ただそれだけだったのだ。<BR>
 借りてきたのは父親だったが、面倒だから返してこいと、言ったのだ。<BR>
 ついでにコンビニでなんか買って帰ろうと、自転車にまたがった。<BR>
 車のヘッドライトが迫ってきた。<BR>
 狭い路地だった。<BR>
 家はすぐそこで、気を抜いた途端の奇禍だった。<BR>
 ぶつかった。<BR>
 そんな気がした。<BR>
 そうして、気がつけば、ここにいる。<BR>
 窓の外は、夜空。<BR>
 それも、星を身近に感じるほどの迫力で迫ってくる。<BR>
 ここは、この城で一番高い位置にある部屋だということだ。<BR>
 三十畳ほどの室内には、やけにきどった家具が配置されている。<BR>
 紫紺に金のアクセントの装飾は、まるで外国の城のようだ。<BR>
 天井からぶら下がるシャンデリアや、天井に刻まれた絵が、ますますその雰囲気を強めている。<BR>
 なんと言ったか。<BR>
「宇宙(そら)の間でございます」<BR>
と、自分とさして歳が違わないだろう、立ち襟の軍服めいたお仕着せを着た外国の少年が今日からはこちらを使えと言いながらそうつけ加えた。<BR>
「宇宙……か」<BR>
 ゆっくりと喋ってくれたため聞き取ることができたが、日本語ではない。<BR>
 英語でもなかった。<BR>
 金髪で緑の目のあの男が倫に少しずつことばを教えてくれてはいるが、投げ出したくなる。<BR>
 なんで今更、赤ん坊みたいに言葉を一から覚えなければならないんだ。<BR>
 そう自棄になったのは、つい二週間ほど前のことだ。<BR>
 通じないのは判っていたが、それでも、苛立たしくてならなかった。<BR>
 目の前で穏やかに忍耐強くつきあってくれている男が、実はかなり忙しい立場の人間だと判っていても、だからどうしたんだと、叫びだしたくなった。<BR>
 泣き叫びたくなった。<BR>
 家に帰りたい。<BR>
 食って掛かっても、通じない。<BR>
 困ったように自分を見下ろしてくる整った甘い顔に、腹立たしさばかりが募ってきた。<BR>
 マリリアードと名乗った男と、赤毛のコンラードと名乗った男が、入れ替わり立ち替わり、言葉を教えてくれる。<BR>
 それでも。<BR>
 いや、だからこそかもしれない。<BR>
 倫はこれまでに経験したことがないほどに混乱していたのだ。<BR>
 それに自分自身で気づかないほどに。<BR>
 キレたのは、外に出ることができなかったからだ。<BR>
 たったそれだけの理由がきっかけだった。<BR>
 その日はマリリアードもコンラードもこなかった。<BR>
 ああ、ふたりとも忙しいんだな。<BR>
 座り心地のいい椅子に座ったまま、執事らしい男が倫のために準備をしたノートや本、ネット学習のように単語の発音をくり返している端末の画面を見るともなく見ていた。<BR>
 こちらでーと、指し示されたから座って本をめくって機械のスイッチを入れたものの、気は乗らない。<BR>
 このままでは駄目だと判っていても、だからどうしたというのだと自暴自棄に襲われる。<BR>
 赤の他人のことなど、捨てておいてくれれば良かったのだ。<BR>
 彼らが悪いわけじゃない。<BR>
 倫にも、自分が尋常じゃない何かに巻き込まれたのだということは判っていた。<BR>
 なにひとつ責任もないだろう彼らが、自分をとりあえず引き受けてくれているのだということも、判っていた。<BR>
 だからこそ、彼らに申し訳なくて、ことばを覚えようとしているのだ。<BR>
 感謝しなければ。<BR>
 しかし。<BR>
 だからこそ。<BR>
 ここまでしてくれるのだから言葉を覚えなければという義務感がストレスになって、倫を追いつめていた。<BR>
 イライラがおさまらない。<BR>
 もう駄目だ。<BR>
 息が詰まる。<BR>
 そうして、はじめて、倫は自分からドアノブに手をかけた。<BR>
 これまでは、自分から部屋の外に出ようとはしなかった。<BR>
 だから、知らなかったのだ。<BR>
 ドアに鍵がかけられていることなど。<BR>
「なんで?」<BR>
「なんでだよっ」<BR>
 わからなかった。<BR>
 人当たりの好い顔をして。<BR>
 穏やかに笑ってみせながら。<BR>
 当惑したように、それでも、決して声を荒げずに。<BR>
「……………………」<BR>
「邪魔なんだよな」<BR>
「当然だ」<BR>
「だったら」<BR>
 オレなんかいないほうがいいんだから。<BR>
 窓は大丈夫だった。<BR>
 窓から出るなんて考えないんだろうか?<BR>
 いや。<BR>
 そんなことどうだってかまわない。<BR>
 倫は、窓を越えた。<BR>
 そうして、立ち竦んだのだ。<BR>
 窓の外の景色が、違う。<BR>
 倫が見ていた窓の外は、深い森のようなものだった。<BR>
 それなのに。<BR>
 騙された?<BR>
 外は、整えられた広い、広大すぎる庭園だった。<BR>
 噴水もあれば、廃墟のような佇まいの装飾まである。<BR>
 木立で造られた迷路もあるようである。<BR>
 流れる川の先には、池と呼ぶには大きすぎる、湖のようなものまである。白鳥までもが浮かんでいる。<BR>
 そうして、それを見下ろしている白亜の城。<BR>
 本物の城。<BR>
「なんだよいったい!」<BR>
「なんの冗談だよっ!」<BR>
 城から遠ざかろうと、狭いほうへ狭いほうへと無意識に走り出した倫は、遂に、そこにたどり着いた。<BR>
 まるで昔の人間が信じていた、“平たい地球”のその端っこ。<BR>
 ただし、その先は、流れ落ちる海の水ではなく、どこまでも広がる、宇宙空間だった。<BR>
 吸い込まれる。<BR>
 どこまでも落ちてゆくような錯覚に囚われ、倫は悲鳴をあげた。<BR>
 全身の毛が逆立つような感覚に、その場に蹲り、悲鳴を止めることはできなかった。<BR>
<BR>
<BR>
 意味のない叫びは、やがてひとを呼び、クロイツェル家の警備兵たちがその場で震える倫を遠巻きに、途方に暮れたように眺めていたのだ。<BR>
 彼らはもちろん、クロイツェル家の“客人”のことは知っている。<BR>
 クロイツェルとヴァイツァー両公爵家の当主がどこからともなく伴ってきて後、面倒を見ている少年である。<BR>
 いったいどこの辺境から来たのか、言葉が通じないと言う信じられない噂が事実だと言うことも、いつの間にか知れ渡っていた。<BR>
 だけに、どうすればいいのか、逡巡していたのだ。<BR>
「何をしている」<BR>
「公爵」<BR>
「閣下」<BR>
 揃いの軍服に身を包んだ男たちが、礼をとる。<BR>
 そこにふたりの公爵を認めたためである。<BR>
 付き従う侍従長が指し示す先を認め、マリリアードの口角がほんの少しほころんだ。<BR>
 その変貌に気づいたのは、長く彼に仕えてきた侍従長とコンラードだけだった。<BR>
「顔を見に来ただけだが、診察もしたほうが良さそうか」<BR>
「頼もうか」<BR>
「閣下私が」<BR>
 マリリアードの腕から意識を無くした倫を受け取ろうと侍従長が促すが、<BR>
「かまうな」<BR>
 にべもない。<BR>
「自覚はないのか?」<BR>
 揶揄する潜められた声音に、<BR>
「何がだ?」<BR>
 マリリアードがコンラードを見やる。<BR>
「クロイツェル公爵閣下におかれては、客人殿にひどくご執心とか」<BR>
「なんだそれは」<BR>
 あからさまな言葉遣いに、滅多なことでは刻まれることのない皺が眉間に刻まれる。<BR>
「まぁ、わからぬでもないがな。客人殿は、どういうわけか、酷く庇護欲をそそってくれる」<BR>
「貴公、返事になっておらぬではないか」<BR>
「そら、そういうところさ」<BR>
 コンラードがマリリアードの胸を人差し指で突つく。<BR>
「貴公らしくない」<BR>
 コンラードの心には、ある予感が芽生えていたが、あえて打ち消した。<BR>
<BR>
 いつの世も、悪い予感ほどよく当たるものである。<BR>
 英知の神に喩えられるコンラードもまた、自分のらしくない行動に気づいてはいなかったのだ。<BR>
<BR>
 
 
 
 
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